好きが涙に変わって溢れてく。
「成稀は本当に桜綾のことが可愛いのね」
「何言ってんのお母さん……」
微笑ましそうにお兄ちゃんが出て行った扉を見つめているお母さん。
確かに今はそう思っても仕方ないけど、あいつに限ってそんなことは絶対ない。
「昔からそうよー。だって桜綾が誰かにいじめられて泣いてた時、成稀が真っ先にやり返しに行ったでしょ?」
「それは小学校の時の話ね……」
「だから今もきっと桜綾のことが可愛くて仕方ないのよ」
何年前の話してるんだか……。
今なんて顔みるたびにちょっかい出してくるくせに。
いじめてんのと一緒。
その性格がなくて、毎日優しいお兄ちゃんだったら完璧だったのになぁ。
「桜綾、そろそろ行かなきゃ遅刻するわよ」
時計を見れば、予鈴が鳴る10分前。
「ホントだ。行ってきますっ」
慌てて私は学校へ向かった。
ゆっくりと確実に、自分を苦しめる道へ。