好きが涙に変わって溢れてく。
「桜綾、大丈夫?」
逢織が一生懸命に私の背中を擦ってくれた。
だけど私はずっと下を向いたまま。
「じゃあ行くから!ありがとなっ」
「うんっ」
こっちに魁が向かってくる……
どうしよう。
「片桐おはよう‼」
名前を呼ばれてドキッとした。
そんなに明るい声で呼ぶのは、どうせ明菜と喋れて舞い上がっているからだろうけど。
「おはよう魁‼」
瞬時に笑顔を見せて右手を上げる。
お互いに顔を見合わせると、魁は急ぎ足でその場から去っていった。
それをみていた3人は、とても驚いた様子で。
自分でも、何故そういう態度になったのかわからない。
「桜綾……」
「やっぱ私達は今まで通りの関係でいなきゃおかしいよねっ‼」
「でも……」
「早く行こうよ‼もうすぐチャイム鳴るよっ?」
言いかけた言葉を全て遮り、私は教室に駆け足で向かった。
魁と明菜のことに関して、何も聞きたくなかったから。
そんな私の背中を、3人は何とも言えない様子で見つめていたなんて知るよしもなかった。