好きが涙に変わって溢れてく。
深夜。
誰もいなくなった静かなリビングで、私は1人ホットミルクを飲んでいた。
理由は家に帰ってすぐに眠ってしまったから。
眠気がなくなり、逆に眠れなくなっていた。
ひざにはブランケットをかけて首にはマフラーを緩く巻いて、家の中だというのに防寒対策はバッチリ。
コチコチと秒針の刻む音が響く。
まるでその音で催眠にかかるように、私はボーっとしていた。
「あれ?桜綾……まだ起きてたのか?」
すると、突然顔をのぞかせたのは私服姿の兄。
それにより我を取り戻した。
「おかえり。遅かったね」
座ったまま笑みを向けると、お兄ちゃんは首を傾げる。
「寝ねぇの?」
「ん、今から寝るよ」
飲み終えたマグカップを台所に置くと、私は部屋に戻ろうとした。
「桜綾」
丁度隣を通り過ぎた時、右手をぐっと掴まれた。
「何かあったのか?」
「え?」
「いつものお前じゃねぇぞ?」
お兄ちゃんの顔は真剣そのもの。
私は慌てて目をそらした。