好きが涙に変わって溢れてく。
「やだなぁー何でもないってば。心配ありがと。じゃあもう寝るから、おやすみ」
一方的にそう告げると、私はお兄ちゃんの手を解いて部屋に向かう。
お兄ちゃんは何も言わなかった。
眠たくなかったけど、お兄ちゃんに私の心を読まれそうな気がして、それが怖くて逃げたかったんだ。
誰にも気付かれたくなかったから。
今の私の気持ちに。
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「よっ‼片桐」
「おはよー魁」
毎日楽しみにしていた、唯一魁と2人きりで話せる時間。
会いたくないと口では言ったけれど。
本心は……会いたかったし、話したい。
魁との2人きりの時間を、失いたくないんだ。
たった10秒でも、20秒でも。
「最近どーなんだよ?好きなヤツとは」
「全く進展なし。普段通りって感じね」
「ふーん。やっぱ片想いって難しいよな~」
魁とこういうことを話すのは、明菜を好きだと知った日以来は当たり前だ。