好きが涙に変わって溢れてく。
「片桐ぃ~」
移動教室の途中、後ろから私を呼ぶ声。
もう慣れてしまう程聞いているから、すぐにわかる。
「魁」
「ジュース買って‼」
振り向いてすぐに間近にある魁の顔。
顔が真っ赤になるのを隠すように、私はすぐに顔を背けた。
「何で私が魁にジュース奢らなきゃいけないのよ‼それくらい自分で買え!」
「だって俺金持ってねーもん」
証明するように魁は財布の中身を逆さにする。
確かに財布には1円も入っていないようだ。
「だったら私じゃなくて、違う人に奢ってもらえばいいでしょ?なんでわざわざ私なのよっ」
「みんなノーマネーなの!後頼れんのはお前だけなんだよー。貸しでもいいからさ」
手を合わせて私を見る魁。
素直になれない私は魁を無視して歩き始めた。
「倍にして返してくれるなら考えてあげてもいいけど?」
「きたねー。片桐のケチ‼」
子供のように口を尖らせる魁に向かって、私はイーッと歯を見せた。
もう何も言ってこないから諦めたのかと思っていたら、後ろから意外な言葉が。
「よかったら、お金貸してあげようか?」