好きが涙に変わって溢れてく。
「あ、明菜ちゃん」
ピタリと私の足が止まる。魁が口にした名前に、真っ先に体が反応してしまった。
「ありがとう‼明日絶対返すから」
「全然いいよ。いつでも」
遠くなっていく足音。
私は後ろを振り返ることが出来なかった。
何気にしてるんだろう。明菜が魁と喋るなんて今に始まったことじゃない。
けど胸の中に残るのは後悔。
お金なんて沢山持ってたはず。
100円玉なんて、ジュースを買うくらい入っていたはず。
何で素直に“いいよ”って、“貸してあげる”って言えなかったんだろう。
意地っ張りな自分が大嫌い。
たったこれだけのことで、明菜にヤキモチ焼くなんて。
私はその場から逃げるように走り出した。
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「……で、それで桜綾は1日魁を避けてたわけ?」
「うん、まぁ……そういうことです」
放課後に今日の出来事を彩葉に話していた。
逢織と瞳は用事があるからとすぐに帰っていった。
彩葉と2人で行き着けのカフェでケーキを頬張りながら、私は彩葉に説教されている最中だ。