狐のゲーム[復讐の月]
受話器に耳をあてるが
何も聞こえない
プルルル、という
呼び出し音さえ聞こえない
「どう?」
「何も聞こえない…。
呼び出し音も…。」
「え…?」
「ねぇ…なんか、おかし…」
ペタッ
「「…。」」
「今…。」
「聞こえた…よね…?」
「何の音…?」
ペタッ…ペタッ…
「足音…?どこから…?」
「裸足…っぽいよね…。」
ペタッ…ペタッ
急に足音らしき音が止まった
「ねぇ、瀬戸内君…。
私、今瀬戸内君から見て
左の通路見たけど何もいない…。」
「右は職員室…。てことは…。」
公衆電話は通路の突き当たりにあった
右には職員室、左には別の通路
つまり残るのは…
「「後ろ…。」」
ハッとし確かめようとするが
恐怖と不安がそれを邪魔する
お互い小声で話し始める
「裸足…って…。」
「雨も降ってないから
濡れて乾かしてるわけでもない…。」
「ねぇ…どうする…?」
「何なのか…確かめよう、一応。」
「い、一緒に振り向こ?」
「うん…。」
「せ、せーのっ。」
バッ
振りかなければよかった
そう思う日が来るとは
思わなかっただろう
真っ暗で見えなければよかったのにと
混乱し恐怖しながらも
何故か冷静な思考が頭を駆け巡る
窓からの月明かりで[それ]の
姿が見えてしまった
「ひぃ…あぁあ…!」
「なっ…!」
人間の顔や体をしている筈なのに
その形相は般若の如く
蜘蛛の真似をしているような恰好に加え
本来の足だったであろうものは
潰れているのか血だらけで
何故か胴体からは足が生えていた
異様過ぎるモノに
沙代はただただ
悲鳴をあげるしかなかった
「あぁ…ひぃ…いやぁ…。」
「っ…、逃げるよ!」
「えっ、あぁ、瀬戸内君!?」
逃げなければやばい
そう考えたであろう瀬戸内は
沙代の腕を掴み左の通路へ
一目散に駆けていく