紬ぎ、紡がれ、君に恋して。
第2章
17××年-京の花街ー
‐————————————何だろう・・・人の、声がする・・。
あれ、なんか、ものすごく言葉になまりがあるような・・・。
私、どこにいるの・・・?
目を開けた。
そこは病院でも、公園の前でもなく、賑やかな市中。
だけど、ビルやお店が立ち並ぶわけでもなく、建物は低くてどこか古臭い。
そして、まるで時代劇の役者さんのような服装の人々。
「あんた、大丈夫?」
わやわやとたかっている人ごみの中から一人の女性が出てきた。
髪を一つに結い、薄桃色の着物に白い羽織を羽織った女性。
肌が驚くほどに白く、とても化粧映えしそうな顔立ちをしていた。
「あっ、はい、大丈夫です・・・。」
「可笑しなはなし方なこと。どこぞら来やはったの?」
どうしよう、聞きなれない言葉。日本語を話しているのは確かだけど、私の周りの人たちと話し方が確実に違う。
というか、ここはどこなの・・・。
「東京から来ました・・。」
「トウキョウ?そら東の方?江戸の方どすか?」
江戸・・・・。
ちょっと待って、どういうこと?
江戸ってことはつまり、東京なんてものがなかった時代で。
まさか、江戸時代に来ちゃったとかそういうわけじゃ・・ないよね?
「ほんま、おかしな子やなあ。まあ、長旅で疲れとるのでしょう、うちのとこでひと休みしていきなさいな。」
宿・・・?
もう、頭が痛くなってきた。
私はさっきまで、公園の前にいて・・・
そして、七瀬先輩といたはずなのに・・・
そのあとに何があったのか、思い出せない。
とりあえず私は、その女性と共に行くことにした。