紬ぎ、紡がれ、君に恋して。


「あっ、ありがとうございます・・・。」



「軽いものどすが、どうぞお食べやす。」



女性は、小さなお茶菓子と熱い緑茶を私に出してくれた。


「ほんでまあ、どうしてこないなとこに来たんや?」



「あっ、えっと・・・。ここってどこですか?」




「はあ・・・?あんた、行先も考えんと旅に出たんかい?」




「あ、ええ、まあ・・・。」




「ここは京で指折りの花街どす。花街には芸妓屋やら遊女屋が並んどります」




京ってことは、京都・・・・?


どうして私が京都に・・・?


そして、さっきの会話と結びつけるとしたら、やっぱりこの時代は江戸だ・・。




じゃあ、私は?私は誰なの?



「ああ、旅の人。申し訳ないけど、湯呑みを取ってきてくれへんかね?そこの後ろの戸棚の上から3列目。」




私はすぐに立ち上がって後ろの戸棚に向かう。




戸棚の前に立った時に、驚いた。




その戸棚はつるつるの素材でできており、光の反射で自分の姿がなんとなくわかる。



それで自分の姿を確認して、とても焦った。




これは、私?




肩以上くらいの少しくせのある茶色っぽい髪に、見慣れない顔。



目や鼻は何となく自分に似てる気もしないわけではないがやっぱり別人だ。





どういうこと?私は、意識だけこの人に移動しちゃったってことなのかな?


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