紬ぎ、紡がれ、君に恋して。
「ちょっと量が少ないかもしれんが許してな。今日は買い出しに行っていないんだ」
「あっ!いえ!全然です!」
お夕飯のメニューには煮物や豆腐など質素なものばかりだった。
「おねねさんはここに1人で?」
「いや、ウチは両親共々働き者で。2人は今少し遠くまで商売しに行っとるんどす。うちには妹がいましたが、流行病で旅立ちました。その際にかかったお金があまりにも莫大で、今は両親と私が精一杯働いとるんどす。」
「なるほど…大変だったんですね。」
「いや、確かに大変だけども私の仕事はそこまで苦痛でもないよ。まあ、最初は誰だってあまりやりたくなかったけれども、その分もらえる金が多いからなぁ…あんたは?あんたの仕事はなんや?」
…さっき、紙でまとめてきた。
私は自分で作り上げた情報通りにおねねさんに話すことにした。
「うちには、父と母がいまして…母が昨年病にかかってしまったんです。金銭的にはなんとかやっていけそうな程なんですが、やっぱり生活を安定させるにはお金がもう少し必要で…ですからお金と仕事を探しにあてもない旅に出たんです。」
「ほう…あんたもなかなか大変だね。…なあ、あんた、お金と仕事を探してるって言ってたな?」
「は、はい…そうですけど…」
「ほんなら、うちのとこで働かんか?」
仕事…を依頼されたのかな…?
「でも、なんの仕事なんですか…?」
「それは行ってからのお楽しみや。どう?やってみる気ない?…まあそんなに重労働じゃあないし、室内やから、それに衣装も化粧道具も全てあっち側が出してくれはるんや。あんたなら顔もそこそこやしすぐに慣れると思うわ」
衣装…?化粧道具…?
でも、おねねさんがそこまで言ってくれるなら…
「とりあえず、明日行ってみます。お願いします。」
とりあえず、承諾はしておいた。
無職だと、やることがなくて暇だし、少しでも現代に戻れる手がかりが欲しいしね。
「んじゃ、今日はもう遅いからご飯食べたら寝なさいな。」
「はい、ご馳走様でした。」