紬ぎ、紡がれ、君に恋して。
ガララ…
扉を開けると向こうからおねねさんの声がした。
「もー!起きてたなら行ってなー。驚いたわー。」
「あっ、すみません、ちょっとそこまで散歩しに行ってましたー。」
「もう朝餉が出来てるよー。」
「今行きまーす」
私は草履を脱いで足早におねねさんの元へ向かった。
「うわあっ!」
驚いた。驚くとともに、おねねさんが何の仕事をしているか、大体わかったような気がした。
金色をベースに椿の花がところどころに施された美しい着物。
昨日のような素朴な髪型ではない、優雅で上品に結わえた髪。
そして髪から覗くきらびやかな髪飾り。
そして、化粧でより魅力的になった顔立ち。
昨日の姿とは全く違うおねねさんの姿に思わず息を飲んだ。
「まあ、これで大体わかっただろう?」
こんなに優雅な格好をするお仕事…
それは…あまり考えたくなかったけど…
風俗……だよね…。
「江戸ではなんて呼ぶかはようわからんが、京では遊び女で通っています。…私も向いていないって思いましたけども、位が上がるたびに貰える賃金が上がるから、かれこれ2年半やっとるんです。」
そうだったんだ…。
江戸時代にも風俗みたいなものは存在していたんだ。
朝ごはんが思うように食べられなかったけれども、せっかく誘ってくれたんだ、とりあえずやってみるしか…ないよね…?