紬ぎ、紡がれ、君に恋して。
流れ込んできた映像には、小さな少女と少年がいた。




大きな川のほとりの草がぼうぼうと生い茂ったところに2人はいた。



サッ・・・サッ・・・。


男の子が木の棒を持って草むらを進んでいく。

そのすぐ後ろを女の子が追う。




2人は手足も服も泥だらけの状態に近かった。






ふと男の子が立ち止まった。



「・・・いっくん?いっくん?いたの?」


女の子は今にも泣きだしそうな声で言った。




「・・・いた。この辺だけ草が多いから、いい隠し場所になったんだろうな。」
男の子はそう言って草むらを指さした。


「生きてる?動いてるよね?」



「ああ。生きてるし動いてるよ。かろうじてだけどな・・。」



「よかった・・・。」




少女の安堵の声とともに辺りに響く夏の虫の音も次第に大きくなり始めた。



心地よい、でも少し冷たい風が吹く、もう薄暗い黄昏時だったと思う。
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