紬ぎ、紡がれ、君に恋して。


先輩の足が止まる。


私も足を止めた。




ザー・・・。


気がついたらもう川の近くに来ていた。





ワンワン!




私たちの前方に犬を散歩させているおばあさんがいた。おばあさんは犬のスピードに合わせて少し歩きを速めている。犬はその少し後ろをてくてくと短い足でついていく。



その瞬間に、思い出した。







前に流れ込んできた映像、あの中にいた生き物は”犬”だった。


名も忘れた少年と私はあの日、か細い鳴き声を頼りに捨て犬を見つけたんだ。








「クロちゃん」


先輩が呟いた。






私は驚いた。












だって







2人が拾った犬の首輪に書かれていた名前は




クロちゃんだったから―—。





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