クールな社長の溺愛宣言!?
 オフィスを出ると、スキップしそうなほど軽い足取りでエレベーターホールに向かう。ニヤニヤしながらエレベーターを待っていた私は、扉が開いた途端に中に入ろうとして、出てきた人とぶつかってしまった。

「わっ……ごめんなさいっ」

 相手のスーツの胸元に正面衝突する。きっと気持ちが浮ついていて、注意力散漫(さんまん)になっていたせいだ。
 まずは状況を把握(はあく)しなくては……と、顔を上げて相手の姿を確認する。そこにははっと息を呑むほど整った顔の男性が立っていた。

 失礼だとわかっているけれど、思わず目が釘づけになってしまう。

 年齢は私よりも十歳ほど上に見える。恐らく三十五歳は過ぎているだろう。

 見上げるほど高い身長。きちんと整えられた清潔感のあるスタイリッシュなツーブロック。身に着けているスーツも恐らくオーダメイドのものだろう。彼の体にぴったりだ。意志の強そうな整った眉に、まっすぐ伸びた鼻梁(びりょう)。そしてなによりも印象的だったのが、切れ長でクールな目元だった。

 その形のいい瞳に睨(にら)まれて、私はやっと我に返った。

 ぶつかったまま顔を凝視するなんて、失礼にもほどがある。とにかく謝らなければ。

「きちんと前を見てなくて、本当にすみませんでした」

 頭を下げて謝るが、相手の反応が返ってこない。ゆっくりと顔を上げると、感情の読み取れない顔が、冷たい言葉を投げつけてきた。

「いつまでもそこに立っていられると、邪魔だ」

「へ?」

 思ってもみなかった言葉に、間抜けな声が出る。
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