クールな社長の溺愛宣言!?
第二章
恋人になってやる
「ペーパーを読めばわかる話はもうけっこうだ。俺はここに書かれていない情報を知りたい」
午後一番の会議室に進藤社長の冷たい声が響いた。決して怒声を上げているわけではないが、その迫力にここにいる人たちは皆恐れおののいて肝(きも)を冷やしているに違いない。
――とはいえ、その言い方は……。
社長の後ろに控え、はらはらしながら会議の成り行きを見守る。
進藤社長の秘書になって一年半が経つ。私は二十九歳という妙(みょう)齢(れい)女性の貴重な日々を、社長秘書の仕事に捧げていた。
今日も不機嫌を隠そうともしない私のボスは、重役たちが居並ぶ会議室の気温を一気に氷点下まで下げていた。
「次」
「はいっ!」
大きな声で立ち上がったのは、最近営業部の課長になったばかりの男性だった。飛び上がるようにして立つと、ところどころつっかえながらも、なんとか話を始める。この会議での自分の役割を、必死になって果たそうとしているのだ。
しかし緊張のせいか、見ていていたたまれない気持ちになるほど、彼のプレゼンは下手だった。熱意もあるし話の内容がよいだけに、もったいない。内容は劣るが、正直先ほどの社員のほうが場慣れしているだけあってスムーズだった。
多くの人が、また社長のブリザードのような怒気が会議室に吹き荒れると思っていただろう。……私を含めた数人以外は。