「僕は、死にたい」
 




手首を切り「自殺未遂」をした29歳の男性がわたしの勤める病院に入院したのは、去年の終わりのこと。


その男性が幼少の頃、お母さんは32歳の若さで自殺したとのことだった。


お父さんは2年前に他界しており、親戚とも疎遠のその男性は、警察と「お母さんの知り合い」に連れられて病院にやって来た。




「…死にたいんです。」


男性は言った。





「入院して、少しゆっくり休みなさい」


そう言った医者の言葉に、彼がうなだれるように頷いたのを、はっきりと覚えている。



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