【完】キミは夢想花*
私が覚えていないだけで、どこかで出会ってたのかな。
「ワタクシのこと、忘れてしまわれましたか?」
だが、いくら思い出を遡っても一向に思い出せない。
こんなにも美しい人のこと、忘れるはずがないと思うが...
「...すみません......」
「まあ、仕方がないでしょう。何年も前の話です」
あまりにも彼の言っていることが分からなく、もしかして新種のナンパなのではとさえ思ってしまう。
前世では知り合いだったとか。そんな類の。
「では、改めまして自己紹介をさせていただきます」
そう言うと、彼は地面に片膝を付け私の顔を見上げた。
「ワタクシは結(ゆい)と申します」
「結...さん...」
......どこかで聞いたことがあるような、ないような。そんな名前。
それでも思い出せない私を見て、口元を緩めこう言った──