【完】キミは夢想花*


「ここでは、多くの妖が娯楽を楽しんでいるのです。ですが、ワタクシが蓮様にお見せしたいモノはこれではないのです」



「見せたいモノ……」



「はい。では、参りましょう」



結さんはそのモノが一体なんなのかは教えてくれないまま、何処かへ向かい歩き出す。



繁華街からしばらく歩き、山の奥深い所までやって来た。



先程とは打って変わり、辺りは静か。



ここに私に見せたいモノが?



「あちらを見てください」



結さんはそう言うと、ある方向を指さした。

指さされた方向に視線を向ければ、そこには夜の闇に広がる中に無数の光輝くロウソクの灯り。



「綺麗……」



思わず言葉が出てしまうほどの美しく、綺麗な、灯り。



「ここは、椿様が管理している地でございます」



「彼が……」



「椿様は、満月の夜このようにロウソクに灯りを灯すのです」



「どうして…なんですか?」



どうして満月の夜にロウソクの灯りをこんなにも沢山灯すのか、気になった。

結さんは私の問いに、少しだけ眩しそうに瞳を細め答えてくれた。

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