【完】キミは夢想花*


結さんは一度深く深呼吸をすると、言葉を発した。



「例え貴方の周りが汚い世界でも、その中に咲く綺麗な花であって欲しい。そして、どうかボクを救ってください。という意味の込められた名を授けたのです」



結さんの言葉から、椿はその赤ちゃんに自分の希望を託したのだと思った。

その時の彼の思いを考えれば、胸が締め付けられる。



「椿様は、その赤子にハスの花…〝蓮〟と言う名を付けました」



「れ……ん……」



まさかと思った。



「その通りです。蓮様、今の話は全て貴方様のお話です」



「……嘘でしょ…?」



もしもこの話が本当ならば…私は椿に酷いことを沢山してきたことになる。



自分を救ってくれたのに…両親を殺したと攻めた。

彼が苦しんでることを知らずに、自分の苦しみを押し付けた。

私のために、彼は自分の命を削った。



「嘘ではありません。事実、ワタクシは椿様が不在の時に、蓮様の子守を任されることが多々ありました」



全ての事実を知り、私はその場に泣き崩れた。



「っ……うぅ…っつ、うう」



どうして、私に嘘をついたの。

どうして、本当のことを話してくれなかったの。



「椿様は、ずっと蓮様を育てる気でした。ですが、人間の子だと知れば妖の標的になりかねない。そこで、椿様は優しい人間の元に蓮様を引き渡したのです」



本当に椿はバカだよ。

大バカ者だよ。



人のこと考えすぎだよ。

もっと自分のために生きてよ。

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