【完】キミは夢想花*


「椿様は、今も苦しんでおられます。ですが、その苦しみを少しでも軽くしたのは蓮様です」


嘘だ。

私なんて椿のためになにも出来ていない。

彼を苦しめてばかりだ。



「椿様にとって蓮様は、掛け替えのない存在。蓮様の存在が、椿様の生きる希望となっているのです」



結さんの瞳はとても真っ直ぐで、本当のことを言っていることは分かる。

それでも……今の私には、結さんの言葉をそのまま信じるほどの勇気も、自信も、なにもかもが欠けている。



「事実、椿様は、いつも蓮様の様子を伺いに、何年も何度も人間の世界へ足を運んでいます。ですが、彼は蓮様の前に姿を現すことはありませんでした……この間までは」



「知らなかった…」



椿が私の様子を伺いに、何度も…何年も私達の世界に足を運んでいたなんて。



「ワタクシも、どうして声を掛けられないのか。どうして、蓮様の前に姿を現さないのか。疑問に思い訪ねたことがあります」



その言葉の後に、〝彼はこう仰りました〟と言葉を付け加え教えてくれた。

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