【完】キミは夢想花*
「〝所詮住む世界が違う者同士。人間と妖は、互いに憎む存在。ボクが蓮の前に姿を現して…良いことなんて1つも無い〟椿様はそのようにワタクシに儚げに仰りました」
「それなら……どうして、私の前に姿を現したの」
そんなことを言うならば、一生私の前に姿なんて現さなければ良かったじゃん。
「先程言ったじゃないですか。椿様は、何年も何度も人間の世界に行っては…蓮様の様子を伺っていたと」
イマイチ結さんの言いたいことの本心が分からない。
「椿様は、蓮様が苦しんでいることに気付いていました」
「えっ……」
それは予想もしなかったこと。
「家族のことで悩んで、悩んで、自分に居場所なんてない。死にたい、消えたい、そう思っていたことに、椿様が気付かないはずがありません。だって…誰よりもずっと蓮様のことを思っていたのですから」
傍から見れば、ただの反抗期。
ルールを守れない問題児。
そんな言葉で片付けられるような、モノに過ぎない。
「ですがワタクシは、この件に関して反対いたしました。蓮様が苦しんでいる原因は少なからず椿様にあるのですから。今頃彼女の前に姿を現したところで、更に苦しめることに違いないと」
「……」