【完】キミは夢想花*


「ですが、椿様はワタクシに仰いました。〝ボクがそうであるように…誰でもいい、自分を認めてくれる存在が欲しいんだ。そして、誰かを恨むことで生きようと思えるなら、ボクはそれを喜んで買って出るよ〟椿様は、本当に真っ直ぐ、蓮様。貴方のことしか見ていません」



彼と初めて会った日のことを思い出した。



心が悲鳴を上げていて、ただ1人河川敷で泣くことしか出来なかった夜。



いきなり話し掛けてきて、自らボクは不審者じゃないと公言したこと。



彼の第一印象は、今まで見てきた中で1番綺麗で美しく、だがどこか不安定さを感じ、〝儚い〟という言葉がピッタリだったこと。



初めて、心の奥底にしまい込んでいた気持ちを打ち明けたこと。



『死にたい』と言葉を漏らせば、なんの躊躇いもなく『じゃあ、一緒に死ぬ?』なんて言ってきて、私に死ぬことを持ち掛けてきたこと。



その日の夜椿に出会って、生きる希望なんてからっきし無かった私の日常に、色が徐々につき始めたんだ。



〝死〟という言葉。

決して善い言葉として扱われない言葉。



なのに、私を生かした言葉は紛れもなく、この言葉だ。

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