【完】キミは夢想花*
「では蓮様。行き同様、ワタクシが良いと申すまで瞳を瞑って頂けますか?」
コクンと首を縦に振り、そっと瞳を閉じた──
じゃあね、椿──
私は椿に心の中で語り掛け、後は結さんに体を預けた。
***
「蓮様、開けてよろしいですよ」
そう言われて瞳を開ければ、私の家の前。
「今夜はワタクシの我儘に付き合って頂き、誠にありがとうございます」
「こちらこそ、ありがとうございました」
本当にこれでお終いなんだと改めて感じる。
「蓮様、1つだけワタクシとお約束をしてくれませんか?」
「約束…?」
「もしも、椿様の身に何かが起きた時…蓮様だけは信じてあげて下さい」
「もちろんです。彼が私にしてくれたように、私も彼を救いたい。椿を誰よりも信じてみせます」
私が答えると、結さんは泣きそうな表情を浮かべながら微笑んだ。
そして、深々とお辞儀をすると…私の前から姿を消した──
瞳を閉じれば、今日の出来事を鮮明に思いだす。
無限に広がるロウソクの数々。
その中に儚げに火を灯す椿の姿。
結さんから聞いた真実。
どれも決して嬉しく、喜べる話や光景ではない。
でも、すべてに温かさを感じられるモノだった──