【完】キミは夢想花*
寺野亜子──
容姿端麗で、成績優秀、おまけに委員長も務めるほど。
そんな彼女は先生はもちろんのこと、生徒からの人気は抜群。
たまにしか登校してこない私でも彼女の評判の良さは耳にするほど。
「心配してたんだよ?」
きっと寺野さんは委員長だから、クラスで浮いている私を見て見ぬフリができないだけ。
それか、ただ単に先生や生徒の株を上げたいかのどちらかだろう。
なんせ私に関わって良いことなんてそれぐらいしかない。
「そう...」
だから適当に返事をする。
結局は自分のことしか考えていないような人に心配してもらう義理もない。
私のことなんてなにも知らないくせに。
「あっ、そうだ!はい、これ」
どこまでも捻くれている私に、寺野さんがノートを差し出した。
「...これなに?」
「十和田さんが休んでいた分のノート!」
...わざわざ私のために??
「ほら。この学校ここらじゃ一応有名な進学校だし...ノートないと不便でしょ?」
...前言撤回。
さっき思ったこと、心の底から謝ります。
「ほら、受け取ってよ」
寺野さんは私にノートを持たせた。
でも...私のためにどうして?
株を上げるでもなくて、委員長としての立場からとかじゃないとしたら...
私に良くする意味なんてないのに。
「どうして...私のために?」
疑問を1つ言葉にした。