【完】キミは夢想花*
こんなボクの幸福を祈ってくれたこと。
守ってほしいと願ってくれたこと。
誰かにそんなことを願われるなんて……ボクの人生には、縁もゆかりもないものだと感じていたから。
思いがけない出来事に我慢が出来ず泣いてしまったんだ。
それから少しして、ボク達は思い出話をした。
今日で会えるのは最後。
今後会えることは一生ない。
そう分かっていたからこそ、ボクは楽しい話、幸せだった話だけを促した。
せめて、ボクのことを思い出す時……
今日のことを思い出す時……
悲しいばかりの思い出なんかじゃなく、楽しいこと、幸せだったことを思い出して欲しい。
ボクのことを思い出せばきっと、楽しいことよりも、嬉しいことよりも、幸せだったことよりも、悲しいことや辛いことばかりを思い出すことになる。
だからせめて、今日という日だけはそんな思いをしなくて済むように。
ボクはそうしたんだ。