【完】キミは夢想花*


これは......恋じゃない。

きっと。

ただ......嬉しかっただけ。

それだけのこと。



熱い顔を抑えながらそんなことを考える。



「ふふ、今度紹介してよね」



「だから恋じゃないってば!」



「はいはい」



うう...亜子はニヤニヤして笑ってるし......

なんだか、負けた気分......



でも、椿のことでからかわれるのは、不思議と嫌ではなく、なんとなく照れ臭かった。



そしてお昼には、お母さんの手作りのお弁当を頬張った。

お弁当を開ければ、私の好物しか入っていないお弁当。

そんな気遣いに、泣きそうになる。

コンビニで買うお弁当とは違って、とても温かく懐かしい味。



私はお弁当の入っていたカバンに1枚のメモ帳を忍ばせた。



直接言うには勇気がなくて言えない言葉。



〝美味しかったよ〟



今の私の精一杯の素直な行動だ。

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