【完】キミは夢想花*
椿は再び優しく微笑んだ。
その微笑みは、さっきのとは違ってどこか儚げ。
でも、その姿は息を呑むほど美しい。
「それはね、蓮を幸福に導いてくれるお守り」
想像していた言葉と違う言葉に反応に困ってしまう。
「ボクの代わりに、その石が蓮を守ってくれる」
「代わりって?」
そんなことを言うなら椿が私を守ってくれたらいいじゃん。
素直に言葉を受け取って、信じて、喜べばいいものの。
今の私は変なところに敏感だ。
それはきっと、彼の持つ儚さが私を不安にさせているに違いない。
「蓮はズルイよ。ボクの痛いところをついてくる」
「だって......」
その続きの言葉を無意識に言おうとして、思いとどまった。
私は今、
だって、椿が好きだから──
確かにそう言おうとしていた。
好きだから不安になる。
好きだから些細なことが気になる。
好きだから会いたくなる。
その言葉をつければ、全ての行動の意味が明確になってしまう。
「だって??」
「......なんでもないよ。椿のおかげで、幸せになれるといいな」
もちろん言葉の続きを言える訳もなく、誤魔化す始末。