【完】キミは夢想花*


「そんなヤツ、死ねばいい」



「......あ、こ......??」



まさか亜子の口から〝死〟という単語を聞くことになるとは思いもしなかった。



いつも笑顔で周りを引っ張っていってくれるようなお日様みたいな存在。

なのに...今の彼女にはお日様なんて言葉が似合わない。



これが亜子の本性なのか。

それとも、正義感からなのか。



いつもの亜子と、今の亜子。

どちらが本当の亜子か分からない。

おまけに少し恐怖を感じてしまう。



「......なんてね。早く犯人見つかるといいね」



きっと今の私は、恐怖や不安に押し潰されそうな顔をしていたに違いない。

だから亜子は咄嗟にさっき言った言葉を濁し、苦笑して見せたのだ。



「そうだね...」



私はこれ以上なにも言えなかった。



体育館の屋根には雨音が鳴り響く──



***



23時。

私は河川敷に足を運んだ。



殺人事件があった今、この時間に外に出るのは気が引けるし、正直怖い。

それでも、もしかしたら今夜彼は姿を現すかもしれない。

そう思うと私の足は自然と河川敷へと向かっていた。



事件があったことはここらじゃ既に広まっている。

お陰でいつも以上に人が少ない。



傘に雨が強く打ち付けられる音が響く──



いつもの道を歩いていると、少し先に人の影が見えた。



「椿!!」

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