【完】キミは夢想花*


「...あれ、おかしいな......」



私は何度も流れる涙をゴシゴシ拭う。

それでも涙は止まることなく流れ続ける。



「ご、ごめんねっ......こんな、はずじゃ...」



「ありがとう、蓮」



椿は私の頭をポンポンと優しく撫でてくれた。

けれど私は涙を拭うのに必死でなにも答えられない。



「ボクの代わりに蓮が泣いてくれて、それだけで...ボクは十分」



彼の顔を見たいのに下を向くしかできない。



「でも、もう大丈夫」



〝大丈夫〟と言われ私は顔を上げた。

大丈夫って言葉は、本当に大丈夫な人は使わない。



涙で視界がボヤけながらも椿の姿を捉える。

そして私は彼の手を...彼がどこにも行かないように握った。



「......さよなら、蓮」



「ま、待って!!!」



椿は私の手をそっと離すと私の前から姿を消した──



「つ、つばきぃぃっっっっ!!!!!」



雨の降る夜、私は泣き叫んだ。

強い雨音が私を1人にさせ、私だけの空間を作る。



雨は...やっぱり嫌いだ。

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