【完】キミは夢想花*
椿と最後に会ったあの日から、3日。
その内の1日だけ雨が降った。
けれど椿に会うことは出来なかった。
もう2度と会えないのかな。
私達の関係は友達でもなんでもない。
ただの赤の他人。
それ以上でも以下でもない。
そんな人を私は好きになってしまったのだ。
突然別れが来ることだってありえる話。
「はぁ......」
けれどその現実が酷く辛くて仕方ない。
この気持ちに気づいたのは最近の出来事なのに、もう随分と思いが大きく膨らんでいる。
こんな寂しい気持ちになるくらいなら、いっその事この気持ちに気付かなければよかった。
そうすればきっと...なにも気にせずさよならを出来たに違いない。
登校中、そんなことを頭の中でグルグルと考え続け、足取りは重たくなる一方。
なんとかして学校に着けば、至る所で涙を流している生徒を見掛ける。
気になりながらも教室に入れば、クラスの中はいつも以上に暗く、啜り泣く声と怒りに狂っている声、そして荒れた教室が視界に広がる。
その光景を見て、何か起こったのだと察した。
「......蓮、おはよう」
入口でただ突っ立っていた私に亜子が気づきなんとも言えない表情を浮かべ近寄って来た。
その瞳には涙が浮かんでいる。
「......なにが...あったの?」
私の問に亜子は苦しそうに眉をひそめ...
「あさちゃんが...殺された......」
そう言って亜子はその場に泣き崩れてしまった。
私はその肩をさすることしか出来なくて、掛ける言葉が見当たらない。
あさちゃんとは、私達のクラスの担任。
若い20代の先生で、明るく笑顔の耐えない人。
そして生徒のことを第一に考えてくれて、心配してくれるそんな素敵な先生。
現に私も不登校の時は何度も電話や私の家に訪ねて来て、こんな私を見捨てることをしなかった唯一の先生でもあった。