【完】キミは夢想花*
「そんなこと言わないで!!!!!」
痛み出した頬に気を取られていれば、亜子が私に向かって怒鳴った。
聞いたことのない怒鳴り声に驚き彼女を見れば、亜子は涙を更に流していた。
「......家族も、友達も、大切な人も、全部全部その存在が居るだけで幸せなことなんだよ!!!!!要らないなんて偉そうなこと言わないで。欲しくても手に入らなくて、手に入れるのに苦労して、人に認めてもらうために自分を偽って......そんなこと言えるのは、なにも無いという絶望を知らないからなんだよ!!!!!」
「......ご、めん......」
私はただただ謝ることしか出来ない。
「......お願いだから...もう、こんなこと言わないで......」
亜子は私にすがり泣いた。
どうして亜子がここまで怒ったのかは分からない。
でも、もう二度とこの言葉は使わないと心に決めた。
***
連続殺人事件は雨の降る夜に起こり。
殺し方はとても綺麗で、一種の芸術作品のようだと聞いた。
証拠を隠したような痕跡は全く無いのに...未だに犯人の手掛かりを見出せていないらしい。
そして、その殺人の目的も未だに謎のまま。
強盗でもない。
被害者は誰かに恨まれるような人物でもない。
単なる遊びなのか。
でも遊びにしては出来すぎている。
あさちゃんが殺されて1週間後、やっと身辺が落ち着きお通夜が開かれた。
お通夜には沢山の生徒が参列した。
棺の中に横たわるあさちゃんは、色白く、ただ眠っているかのようで美しかった。
お通夜のあと、待合室であさちゃんの姿を思い浮かべぼーっとしていると、
「蓮ちゃんかい?」
あさちゃんのお母さんに声を掛けられた。