【完】キミは夢想花*
「...はい」
私は立ち上がり頭を下げる。
「隣、良いかしら?」
「はい」
お互い椅子に腰掛ければ、おばさんは1つ深呼吸をして言葉を話し出した。
「......あの子からね、蓮ちゃんの話を聞いたことがあるの」
「私の話ですか?」
おばさんは優しく頷く。
「クラスに1人、不登校の子がいるって」
それは間違いなく私のことを指している。
「たまに実家に帰って来ては、どうしたら登校したいって思ってもらえるかな。声掛は正しかったのかな。不登校になる前、もっと支えてあげられれば。もっと気にかけていてあげられていたら。ずっと...蓮ちゃんのことを考えていたの」
「あさ...ちゃん......」
その言葉を聞いて、私はただただ涙を流すことしか出来ない。
どんな時も私に分け隔てなく笑顔を向けてくれて。
不登校になってからも、あさちゃんは私のことを心配して電話や家に来てくれたり。
優しい言葉を沢山掛けてくれた。
なのに私は......なに1つ...あさちゃんに返せていない。
冷たい言葉を投げつけた。
無視だってした。
酷い態度を沢山とったのに、私を見放さなかった唯一の先生。
恩返しをしたいのに。
したいと思った時には時遅し。
「それでね、少し前私に笑顔で報告して来たの」
私は涙をゴシゴシ拭いおばさんに視線を向ける。