【完】キミは夢想花*
おばさんの瞳には涙が浮かんでいる。
「蓮ちゃんが学校に来てくれたの!!そう言って笑顔で話してくれたのよ」
私が学校に登校しただけで喜んでくれる存在がいることに初めて気付かされた。
「蓮ちゃん...蓮ちゃんに、なにがあったのかは分からないけれど、ちゃんと見てくれる人はいるのよ。それだけはしっかり覚えていて欲しいの」
その言葉を聞いて私は再び涙が溢れだした。
「......あり、がとう、ございますっ......」
「こちらこそ、あの子を...先生にしてくれて、ありがとう」
私にそう掛けた言葉は微かに震えているように感じた。
そしておばさんは、泣きじゃくる私の頭をポンポンと撫でその場を立ち去った。
「うっ......ううっ......っづ......」
待合室には私の鳴き声が響く──
その間、頭の中にあさちゃんの笑顔を何度も思い出した。
ふにゃっと笑った顔はとても可愛らしくて、優しい笑顔。
そして笑顔を思い出せば必ず、あさちゃんの泣き出しそうな顔が脳裏に浮かぶ。
あさちゃんは私の前では1度も涙を見せなかった。
私がどんなに酷い態度をとっても、眉を顰め困ったように微笑み、涙を我慢する。
悔しいことに笑顔の回数よりも、その顔をさせた回数の方が多い。
もっと私が素直だったら。
もっと私が大人だったら。
悲しませなくてすんだのに──
後悔ばかりが募る一方。
もう、やめよう。
変なイジばかり張るのを。