【完】キミは夢想花*
私と陽がお母さんの方を心配そうに見ていれば、お父さんがこちらへやって来て、私達家族を大きな腕で強く抱き締めた。
その腕に改めて私の居場所はここだと再確認し、再び涙が溢れ出す。
「あー!お姉ちゃんもお父さんも泣き虫さんだー!!」
陽の言葉にお父さんの方を見れば、お父さんはハニカミながら涙を流していた。
「ははっ、本当だ!陽の言う通り、みんな泣き虫さんだなー!ははっ!」
今日、初めて見た両親の涙。
その原因は全て私にあって、でも、この涙が悲し涙じゃないことは伝わってくる。
温かい、嬉し涙。
この人達が私の家族でよかった。
例え生みの親でないとしても、私の掛け替えのない本当の親。
そして私のたった1人の妹。
「もーう!陽1人で、お父さんとお母さんとお姉ちゃんのお世話なんて出来ないよーーーう!!!」
少ししんみりしていた空気も、この陽の言葉で笑い声が家中に響き渡った。
あの頃の私に教えてあげたい。
家族はこんなにも温かいものだということを。
決して独りではないということを。
その日のお昼、私は少し出掛けてくるとだけ伝え美容室に足を向けた。
「今日はどんな感じにしますか??」
美容師さんが尋ねてくる言葉に対して私は迷わず、
「黒髪にして下さい」
と伝えた。