【完】キミは夢想花*
「あっ、今年も...」
お母さんは何かを見て、そんなことを言った。
「どうしたの??」
「あれよ」
お母さんの視線の先を見れば、一輪の花。
夏らしくて可愛らしいお花だ。
「お花がどうしたの?」
「毎年ね、この時期になるとああやってお花が供えられているの」
「毎年?」
「毎年のことなんだ」
私の質問に今度はお父さんが答えてくれた。
「でも、誰がお供えしてくれているのかは分からなくてな...何度もこの墓地には来ているのに、1度も鉢合わせになったことがない」
「1度はお礼を言いたいと思っているのだけど...会えないことには言いようがないのよ」
お父さんとお母さんは悲しそうにまゆを潜めた。
私はぼんやりと、置かれている一輪の花を見つめる。
すると、今まではあまり考えないようにしてきたことがふつふつと込み上げてくる。
お父さんとお母さんはどんな人だったんだろう。
なにをしていたんだろう。
今まで育ててくれたお父さんとお母さんとの関係はなんなのだろう。
どうして......死んでしまったのだろう。