【完】キミは夢想花*
お墓参りに行ってから数日経った今日は、終業式。
天気は生憎の晴天。
ここしばらく雨が降っていない。
私としては雨の降る日を待ちに待っている。
今度こそ、次こそ、もしかしたらあの場所に椿が来ているかもしれない。
いつまでも椿のことを諦められない私は、相当たちが悪い。
会えない日々が募るばかりで、逆にあの時、あの瞬間の出来事は夢の中だったのではとさえ思えてくる。
けれど、胸元に光る金色の石が夢じゃないことを証明してくれた──
そんな思いを抱きながらも登校すれば、みんな明日からの夏休みに浮かれている顔を見せている。
「十和田さん、おはよう」
「おはよう」
すっかり、私の姿に見慣れた生徒は多く。
もう誰も騒がなくなった。
「蓮は夏休みどこか行くの?」
教室ではいつものように、亜子が私に話し掛けてくる。
「とくに。家でゴロゴロする感じかな」
日頃からアウトドア派ではなく、何方かと言えばインドア派。
強いて言うなら、陽に公園に一緒に行く約束をさせられたぐらい。