【完】キミは夢想花*


「蓮、それじゃあ...私行くね」



「亜子......またね。また...」



このままどこかへ行ってしまう。そんな気がした。

でも、椿の時みたく...私に人を引き止める力はない。



「ありがとう、蓮」



そう言うと亜子は私に背を向け歩き出した。



「......ありがとう、亜子」



私は泣き出しそうなのを堪え、細い声で亜子に向かって伝えた。



視界には、雨の中姿を消していく彼女の姿。



その姿をただただ眺めることしか出来なかった──



***



家に帰宅すると、私は自分の部屋に閉じ込もった。



窓の外には雨音が鳴り響く。

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