【完】キミは夢想花*


椿はいつものように、背中を丸め悲しそうに暗闇に向かって歩き出した。

それから少し時間をおいて、亜子が椿のあとを隠れながらついて行った...



やっぱり、偶然でもなかったんだ。

亜子は、椿を知っている...



私の中で1つの点と点が結ばれた。



このまま大人しく帰ることも出来ず、2人のあとをついて行った。



雨音が丁度よく、私達の存在を消しているように感じる。

まるで、この世界に私達しか存在しないみたいに。

辺りには人の気配もなにも感じない。



河川敷から10分ほど歩いたところで、椿はとある一軒家の前で足を止めた。



ここが...椿の仕事場?



それにしては、ごくごく普通の家だ。



会社の看板はもちろん無いし。

家の中の明かりは1つだけで、とてもじゃないが仕事をしている雰囲気は感じ取れない。



......も、もしかして家政婦とか...?

でも、深夜に?

じゃあ、ベビーシッターとか?

深夜子どもの面倒を見ます的な仕事をしていて、だからいつもこの時間に仕事に行っているとか?



なにが不安なのかもイマイチ自分で分からない。

だけど、妙に心がザワつくのだ。



そのザワつきを取りたくて、無理矢理そこに理由をつけていく。

< 72 / 202 >

この作品をシェア

pagetop