【完】キミは夢想花*
椿はいつものように、背中を丸め悲しそうに暗闇に向かって歩き出した。
それから少し時間をおいて、亜子が椿のあとを隠れながらついて行った...
やっぱり、偶然でもなかったんだ。
亜子は、椿を知っている...
私の中で1つの点と点が結ばれた。
このまま大人しく帰ることも出来ず、2人のあとをついて行った。
雨音が丁度よく、私達の存在を消しているように感じる。
まるで、この世界に私達しか存在しないみたいに。
辺りには人の気配もなにも感じない。
河川敷から10分ほど歩いたところで、椿はとある一軒家の前で足を止めた。
ここが...椿の仕事場?
それにしては、ごくごく普通の家だ。
会社の看板はもちろん無いし。
家の中の明かりは1つだけで、とてもじゃないが仕事をしている雰囲気は感じ取れない。
......も、もしかして家政婦とか...?
でも、深夜に?
じゃあ、ベビーシッターとか?
深夜子どもの面倒を見ます的な仕事をしていて、だからいつもこの時間に仕事に行っているとか?
なにが不安なのかもイマイチ自分で分からない。
だけど、妙に心がザワつくのだ。
そのザワつきを取りたくて、無理矢理そこに理由をつけていく。