【完】キミは夢想花*
そうこう考えていると、椿は家の中に入っていった──
普通に家の中に入って行った姿を見て、安心する反面。
亜子が未だに家の方に視線を向けているのが気になった。
私は勇気を出して、亜子に近づいた。
「亜子」
彼女の肩に手を置いた時。
「っ.........!!!!!」
手で声が出るのを必死に抑え、驚いた。
「ご、ごめん驚か...んんんっ」
驚かせてしまったことに謝ろうとしたが、亜子は私の口を抑え話すのを制止した。
そして、私の耳元で蚊の鳴くような声で...
「ごめん。でも、静かにして...」
亜子の目は今まで見たことのないほど真剣で、静かに頷くことしか出来ない。
その瞳は今にも泣きそうにも見える。
彼女は言葉を続けた。
「......蓮。今すぐ家に帰って」
「...どうして...?」