【完】キミは夢想花*


「蓮ダメ。待って。お願いだから...行かないで」



背後からは亜子の声が聞こえてくる。

でも、振り返ることなく歩み続ける。



玄関の前に立った時。



中から声がした。



「誰か、助けて......」



女の人のか弱い声。



ドアノブに手をかけた時...



「貴様、誰だ」



聞いたことのない低い声。



振り返ると、着物に袖を通した男が1人。

そして、その男の片手には亜子が抱えられていた。

亜子の額には血が滲んでいる。



「......あ、こ...」



「コイツの仲間だな」



そう言うと、男は私のみぞおちを殴った。



あまりの痛さに声が出ない...



「今夜は虫が疼くのう」



男は私をも抱えて、家の中に入っていった──

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