【完】キミは夢想花*
亜子...ごめん。
髪の隙間から見える亜子に、今更遅い気持ちを抱く。
だが、このまま大人しく捕まったままでいる訳にいかない。
どうやって...亜子を連れて帰ろう。
どうやって、ここから逃げよう。
家ではお母さんもお父さんも陽もみんな心配してる。
きっとそれは亜子も同じに決まってる。
私はぼーっとする頭を働かせ考えた。
そうだ、椿...!
椿がこの家に入って行くのを見たんだ。
椿がもしも無事ならば、手を貸してもらえる。
まず、椿を探さなくちゃ。
お腹の痛みは未だに引けないが、さっきよりはだいぶ良くなった。
私は体を少し起こした......
それと同時に、
「......逃げないように見張っておけ」
あの男が従っているであろう人物の声が聞こえた。
それは妙に馴染みのある、落ち着いた声。
顔を見なくても分かってしまう。