【完】キミは夢想花*
「はっ!!椿様」
久しぶりに聞いた彼の声。
私はゆっくりと顔を上げた。
すると今まで見えていなかったモノが露になる。
部屋の中は棚が豪快に倒れ。
床には本やガラスの破片が散らばっていて。
元々綺麗であったろうリビングは原型をとどめていない。
それから、所々に落ちているどす黒く赤いモノ。
少し先には見慣れたパーカーのフードを被った姿。
そして彼の前には、顔を真っ青に染めた女の人と泣き叫ぶ男の子の姿。
「......つば、き.........」
私は彼の名前を口にしていた──
「......えっ...」
声が聞こえたのか、彼はゆっくりとこちらを振り返った。
椿と目が合う...
「れ......ん......」
彼は私の姿を見て、酷く顔を歪めた──......