【完】キミは夢想花*


目の前には耳とお腹を抑えた彼の姿。

お腹を刺され苦しむ彼の姿。



あまりにも衝撃的すぎて、あまりにも空想的すぎて、素直に今目の前に起こった事実を受け止めきれない。



けれど亜子はそんな私にとどめを刺すかのように...



「連続殺人事件も、コイツが犯人」



言葉を続けた。



人間はあまりにも衝撃的すぎる事を1度に沢山知ると、夢の中にいる感覚に陥る事をたった今知った。



どこか静けさの中に1人ぽつんと佇んでいるような。

上から世界を眺めているような。



決して、幸せじゃない。

孤独な夢を。



「コイツは、人間のフリをして...私達の世界を狂わす化け物」



そんな私の脳内には亜子の言葉が重く響き渡る。



ニンゲンノフリヲシタ......バケモノ──



私は夢の中で言葉を必死に探す。



「…...っ...嘘...だよ、ね...?」



なんとかして言葉を発したものの、口の中は渇きカラカラ。

おまけに声は喉につっかえて、思うように出てこない。

それでも、必死に問掛ける。



違うよね。

冗談だよね。

嘘だよね。

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