【完】キミは夢想花*


視界に映る光景を私は信じたくない。



だから、必死に縋る。



彼の口からはなにも聞いていないから。



彼の言葉をなにも聞いていないから。



彼が否定すれば、私はきっと......

それを信じる。



都合の良いことだけ。

信じたいものだけ。

私は信じたい。



でも、そんな私の思いはすぐに打ち砕かれた。



彼は深く1つ呼吸をし、息を整えると立ち上がり言ったんだ。



「......本当だよ」



人間にはあるはずのない猫の耳を隠すのを辞め、私の瞳を真っ直ぐ見ながら。



「なにか、理由があるんだよね?」



「ないよ」



「亜子の家族、殺してないよね?」



「殺したよ」



誤魔化して欲しかった。

言い訳をして欲しかった。

< 84 / 202 >

この作品をシェア

pagetop