【完】キミは夢想花*
視界に映る光景を私は信じたくない。
だから、必死に縋る。
彼の口からはなにも聞いていないから。
彼の言葉をなにも聞いていないから。
彼が否定すれば、私はきっと......
それを信じる。
都合の良いことだけ。
信じたいものだけ。
私は信じたい。
でも、そんな私の思いはすぐに打ち砕かれた。
彼は深く1つ呼吸をし、息を整えると立ち上がり言ったんだ。
「......本当だよ」
人間にはあるはずのない猫の耳を隠すのを辞め、私の瞳を真っ直ぐ見ながら。
「なにか、理由があるんだよね?」
「ないよ」
「亜子の家族、殺してないよね?」
「殺したよ」
誤魔化して欲しかった。
言い訳をして欲しかった。