【完】キミは夢想花*
でも、彼は誤魔化すことも、言い訳もしなかった。
私の質問に、否定なんてせず。
ただ、儚げに答えて見せた。
「どうしてっ...あの時、私も殺さなかったのよ...!!!」
私の視界には項垂れながら彼に弱々しく問い詰める姿が映る。
「私がどれだけ苦しみながら生きてきたと思ってるのよ。家族全員殺され、私は犯人を見たから...猫の耳が生えたヤツの仕業だって話したのに...みんな信じない。むしろ奇妙なことを言い出す頭のおかしいヤツ扱い」
亜子...
「お陰で親戚にはたらい回しにされ、終いには施設送り。学校でも気味悪がられ、いじめられるだけ。人に信じて貰えないと、この世界では生きていけない。居場所がない。だから、私は...必死に、人に信じて貰えるように、自分を偽った。努力した。嫌われないように、嫌われないように...毎日毎日四六時中、自分を殺して生きてきた」
始めて聞いた彼女の過去。
それは、彼女の人生の壮絶さが伺えた。
「あの時...私も殺してくれていれば......こんな思いしなかったのに。あの時、殺してくれていれば...私は今も家族と一緒だったのに.........」
「......ごめん」
彼は言葉を向けた。
そして、
「蓮...ごめん」
彼は私にも向けた。