【完】キミは夢想花*


外は相変わらず、激しく雨が降り続いている。



「......あの時も......」



あの日から、私達の間には必要最低限の会話しか存在していなく、それ以外は全て沈黙。

でも、その沈黙を先に破ったのは亜子の方だった。



聞き返す代わりに、私は亜子の前の席に腰掛ける。

その動作を待つと、亜子は再び話し出した。



「雨が降っていた...」



私達にとって雨の日は、様々な思いが巡る日。



「私はまだ幼くて、何が起こってるのか分からなかった。ただただ怖くて、クローゼットの中に隠れてたの」



彼女は瞳を閉じ、息を整えると話の続きを私に聞かせる。



「家族が殺されて、怖くて怖くて堪らなかった。ただ隠れていることしか出来ない自分だった。部屋にアイツだけになった時、アイツは私の死んだ家族に向かって静かに手を合わせていたの」



「手を......合わせる...」



それは衝撃的で。

理解し難い出来事。

殺したのに、手を合わせる。

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