【完】キミは夢想花*


「幼かったから、もちろんその行動が何を意味するのかなんて分からない」



その言葉の後に、今も分からないけど。と苦笑いして言葉を付け足した。



「でもね、幼いながらに理解は出来たの。家族は全員殺されて、たった1人、私だけが生きてるってこと」



亜子の話を聞いただけでも、その時の光景は悲惨なものに違いないことが分かる。

でも、当事者となった亜子はきっと...私が想像したことよりももっと、ずっと、残酷で悲惨な光景を見たに違いない。



「私はクローゼットから飛び出してアイツの前に出たの。するとアイツは私を殺そうとはせず、むしろ顔を歪め言ったの」



私は黙って彼女の言葉に耳を傾ける。



「ごめんなさいって」



「......ごめんなさい......」



あの時も言っていた。

私達にごめんなさい、と。



どうして彼はそんなことを言うのか、私には理解が出来ない。

いや、私じゃなくてもきっと。誰も理解できないに違いない。

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