【完】キミは夢想花*
もしも彼の気持ちを覗くことが出来たのなら。
彼の行動にも、言動にも、全て納得出来たのかもしれない。
彼の...気持ちを知り、歩み寄れたのかもしれない。
でも。
覗くことが出来ないのが現実。
私は彼に歩み寄れない。
彼の心情も理解出来ない。
彼の行動や言動の裏に隠されたモノに気づけない。
「......あんなことを言われなければ、私はただアイツを恨めた。家族を殺した恨みをぶつけられた。なのに......アイツに復讐しようとする度、あの時のアイツの言葉や表情が脳裏に浮かぶの。家族を殺した化け物なのに。心の奥底で引っかかる」
私達が彼に抱いている思いの核は同じだ。
ただ復讐だけに生きられれば。
恨むことだけ出来れば。
少しは生きやすかったのかもしれない。
でも、彼の言動や行動が引っかかる。
「私から家族を奪った憎い相手なのに、復讐だってしたいのに。でも、本当は悪いヤツじゃないんじゃ?って考えが脳裏をいつも過ぎる。こんなこと、絶対に思ったらいけないのに...」
そんな彼女に掛ける言葉は見当たらない。
「だから、この間は...そんな自分の気持ちに蓋をしたかった。私の中には復讐しかないって思い込みたかった。だから......アイツにあんなことしたの。でも...あんなことをしても、何もスッキリしなくて、むしろ、変な罪悪感にかられてる」
復讐って言葉の裏には、その人の人生が詰まってると思った。