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――…


「このお人形さんはどこも悪いところはないみたいだよ」


「ほんとぉ？よかったぁ」


「お人形の診断」と言ったので

エリカの部屋に入って数分はそれらしい行動をしていた。

それから結斗はショーケースの中に入った

「例の人形」の事を、さりげなく口にしてみた。


「あの中のお人形さんも診てあげようね」


エリカは特に反応を示さなかった。

結斗はショーケースを開けると

優しくその人形を手に取った。

手にした瞬間

それが「魔力人形」だという事はすぐに解った。



『僕の声が聴こえるかな…？』


『あなたはだぁれ？』


『僕は「ドールマスター」。
僕が君の話を聞いてあげるよ』


『マスター様?!貴方が…?!』


『うん。だからなんでも話すといいよ。
僕が君を救けてあげるから』


『マスター様…』


その『魔力人形』はゆっくりと語り始めた。


『私はエリカちゃんに捨てられてしまった…。
今までずっと…ずっと一緒にいたのに…
私の居場所、あの子にとられちゃったわ。
そしてこのショーケースの中に
入れられてしまって、寂しくて…
だから私、エリカちゃんが気付いてくれるように
此処から見つめていたの。なのに…』


つまり、彼女の母が感じていた視線には

そう言った意味があったのだ。


『私に気付いて』と

言いたくても言えないもどかしさ。

辛かっただろう…。


壁を隔ててしまうだけで

『魔力人形』同士の交信は不可能になる。


『わかった。君の想い、僕が代わりに伝えてあげるよ』