Android

一呼吸ほど置いて、結斗はエリカを見た。

幼い少女に、優しく語り掛ける。


「エリカちゃん、どうしてこのお人形は閉まっちゃったの?」


「だって、エリカにはこの子がいるから」


新しくもらったその人形を掲げ、エリカは言った。


「新しい子をもらったら、古い子はもういらなくなっちゃうの?」


「違うよ。エリカ、そのお人形大好きよ。
だけどその子、お怪我沢山しちゃったの。
だから、もうお怪我しないように閉まってあげたの」


「そっか。エリカちゃんは優しいんだね」
だけどね、この子は、お怪我をしても
エリカちゃんの側を離れたくないって言っているよ。
エリカちゃんを守りたいって」


「お兄ちゃん、その子とお話が出来るの?」


「うん。だから自分で話す事の出来ないこの子の代わりに
僕が伝えてあげてるんだよ」


大きな瞳をまんまるにして

エリカは結斗を見つめていた。

結斗は「彼女」をエリカに渡すと

にこりと笑って言った。


「怪我をしても、汚れても、僕が治してあげるし
綺麗にしてあげるから。
この子もエリカちゃんの側にいさせてあげて?
この二人のお人形さんが、君の事を守ってくれるからね」


「うんっ!!」


手渡された人形をぎゅっと抱きしめ

エリカは元気に答えてた。




無事に、結斗の仕事は終わったのだ。




< 11 / 62 >

この作品をシェア

pagetop